日本一の桜の名所 霊山「吉野山」

吉野山は金峯山寺を中心とし山岳信仰の霊地とされ多くの寺社が密集する宗教の聖地であるとともに、桜の代名詞と言っても過言ではないほど古来より花見の名所として知られていました。 
また、南北朝時代に、南朝の中心地になるなど、歴史の重要な局面にも度々登場するなど時の権力者達にも愛された場所です。

和歌山県の高野山と熊野三山やこれら霊場同士を結ぶ巡礼路とともに、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されています。

吉野山桜

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、2004年7月7日に登録。

和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場(吉野山、熊野三山、高野山)とそれらを結ぶ巡礼路(熊野参詣道、大峯奥駈道、高野山町石道)が登録対象となります。

三霊場は、古来より山岳信仰の霊地とされ、山伏などと呼ばれる山林修行者が活動していました。

吉野・大峯にある世界遺産の構成資産

金峯山寺
役小角が開創したと伝え、蔵王権現を本尊とする金峰山修験本宗(修験道)の本山
金峯山寺 蔵王堂

大峰山寺
山上ヶ岳(1719.2m)の山頂近くに本堂があり、かつては「金峯山寺」の一部であった。
大峯山寺

吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)
水を司る天之水分大神(あめのみくまりのおおかみ)を主祭神とする。
「子守明神」と呼ばれ、豊臣秀吉も秀頼を授かった際にここを訪れたとされる。
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金峯神社(きんぶじんじゃ)
吉野山の地主神である金山毘古命(かなやまひこのみこと)を祀る。
『栄花物語』には藤原道長が詣でたことが記され「金銅藤原道長経筒 1口」が、国宝に指定される。
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吉水神社
後醍醐天皇を主祭神とし、楠木正成を配祀する。
吉水神社

吉野の中心「金峯山寺」

金峯山寺は、吉野7世紀に活動した伝説的な山林修行者・役小角が開創したと伝えられる蔵王権現を本尊とする吉野修験道の本山です。
金峯山寺は、古来からの山岳信仰に密教・末法思想・浄土信仰など諸要素が絡み合うことで独特の尊格を形成し、時の権力者たちをはじめ多くの信仰を集めました。

中世には、多くの僧兵(吉野大衆と呼ばれた)を抱え、後醍醐天皇が吉野の地で南朝を興したのにはこうした軍事的背景があったと言われています。

近世には、徳川家康の命により、天台宗の僧である天海(江戸・寛永寺などの開山)が金峯山寺の学頭になり、金峯山は天台宗(日光輪王寺)の傘下に置かれることとなりました。
蔵王堂

蔵王権現とは?

金峯山寺の本尊として、中心的な信仰対象となっている蔵王権現は、日本を起源とする多様な神仏を習合させた独特の尊格であり、修験道の祖である役小角が、吉野の金峯山で修行中に示現したという伝承があります。

蔵王権現は、釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩の三尊の合体したものとされます。
神道において、蔵王権現は大己貴命、少彦名命、国常立尊、日本武尊 、金山毘古命等と習合し、同一視され、蔵王権現を祭る神社では、主に上記の5組の神々らを祭神とするようになりました。
金峰山寺 蔵王権現

日本一の桜の名所「吉野」

吉野山全体は、桜に覆われ、古来より今に至るまで日本一の桜の名所として愛されています。
豊臣秀吉が、花見をしたことでも有名です。
3万本の白山桜(シロヤマザクラ)が、咲き乱れる景色は圧巻です。
その桜の密集から「一目に千本見える豪華さ」という意味で「一目千本」と呼ばれています。

江戸で育成されたソメイヨシノに吉野の名がつくように、古来より吉野は桜の代名詞でした。

吉野の桜は、多くの歌人たちの心をつかみ、西行法師(松尾芭蕉が憧れたとされる歌人)等多くの和歌に詠まれました。

西行法師
吉野山さくらが枝に雲散りて花おそげなる年にもあるかな
解釈:吉野山の桜が、咲いていたように見えたが、雲が散ってみれば、実は咲いてはいなかった。咲くのが遅い年だなあ。

吉野山去年(こぞ)のしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ
解釈:今年は、去年とは違う場所の花を愉しんでみたいものだなぁ。

大海人皇子
よきひとの よしとよくみて よしといひし 吉野よくみよ よきひとよくみつ(『万葉集』)
解釈:今のよき人達よ。いにしえの立派な人が良い所だと言う吉野をよく見よう。

なぜ、桜の名所になったのか?

吉野山において桜は神木であるとされたことから、古代より植桜がさかんに行われ、3万本の桜が咲く名所となりました。
祈願する際には、桜の苗を寄進するのが最善の供養となる風習が起こったそうです。
吉野山桜

吉野山の桜が神木とされた理由

1.修験道の祖「役小角」が、金峰山で修行中、蔵王菩薩が至現し、その蔵王権現像を桜樹で彫った。

2.大海人王子(のちの天武天皇)が、吉野山隠棲時、庭の桜が満開の夢を見て、兵を挙げ天下を治めた(壬申の乱)という伝承。

国宝・重要文化財(建物)

国宝

金峯山寺本堂(蔵王堂)
蔵王堂
金峯山寺二王門
仁王門2

重要文化財(一部)

銅鳥居
銅鳥居

木造蔵王権現立像 3躯 – 本堂内陣の巨大な厨子に安置される秘仏。寺伝では中央の像が釈迦如来、向かって右の像が千手観音、左の像が弥勒菩薩を本地とし、それぞれ過去・現世・来世を象徴するという。
特別の行事の際などに開帳されることがある。
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